税理士の今月のつぶやき

2024年9月のつぶやき

新紙幣が発行され、1万円札の「顔」が渋沢栄一氏となりました。同氏が提唱した「合本主義」は、企業の独占的な利益追求を志向する「独占資本主義」とは異なり、公益を追求する人材と資本を幅広い層から集め、事業を推進していく考え方です。銀行は、この“再循環機能”を効率よく発揮するために全国で組織され、実際に多くの産業が、銀行からは資金を、そして広く民間からは人材を調達して興りました。その時代から1世紀と少し、物価高騰と少子高齢化で多くの社会課題が生まれてきている今、再び「合本主義」の思想を思い出す必要があるのかもしれません。

企業の立場から考えた場合の「合本主義」は、自社がその事業を通じて、いかに社会課題を克服し、貢献ができるか、ということだと思います。そのために磨き上げなければならない技術、ノウハウは何か。オリンピック・パラリンピックが開催されたフランスは、まさに渋沢栄一が合本主義を学んだ地でもあります。アスリートが躍動する姿と重ね合わせて、事業を通じて実現したい未来を創造してみてはいかがでしょうか。

     西事務所所長 山田より

2024年8月のつぶやき

毎年行っている北里学院(浦佐)での経済学も7月17日の最終講義をもって、今年も無事終了しました。社会に出る直前の4年生を対象に、4月から7月の毎週1回90分の講義です。学生の皆さんは国家資格取得と就職活動で忙しい毎日ですが、専門外である経済学の講義にも真面目に出席し、様々な質問を投げかけてくれます。講義内容はマクロ経済・ミクロ経済の基礎から始まり、金融、会計、税金、社会保障、自身の将来設計と進みます。世界経済という大きな単位から自分自身の将来設計という最小単位までを考えることで、「社会に出て、一人生活や結婚、出産、老後と心配でしたが、講義で様々な事を学んで不安感が無くなりました」などの感想をいただきます。社会の構造が大きく変わる中でも、変化を自身の生活に積極的に取り入れることで不安感が減少することを実感します。 

ハーバード大学の「リーダーシップ&ハッピネス」講義では、「幸福は感情ではなく、楽しみ、満足、目的意識の3要素の組み合わせ」と分析しています。それぞれの要素を検証し、コントロール可能な部分を工夫・改善することで、自分や周囲の幸福度を高められると論じられています。これから社会に旅立つ若者が、老後の心配ではなく、今を楽しめる20代を過ごせる世の中でありたいですね。


     南事務所所長 市村より 

   

2024年7月のつぶやき

「正論は純度が高いほど、威力を発揮する」。今朝、テレビから流れてきたセリフが、耳にとまりました。そこで、私なりの企業経営に対しての正論を考えてみました。

中小企業は、これまで以上に自らの“付加価値”を認識し提供していかなければなりません。その付加価値は、お客様にとって必要とされるものであり、企業であれば顧客の発展に、個人であれば快適さや潤いに貢献しなければなりません。それをなすためには何が必要か。様々な要素がありますが、一番は「企業は人なり」。働いている社員の皆が同じ方向を向いて、それぞれの個性で活躍する、会社の仕組み、そして風土をつくらなければなりません。それは人しだいではなく、会社しだいです。

といったところが、私が考える企業経営の正論でしょうか。ありがたいことに、関与先様をモデルに、これまでの仕事の中で育まれてきた価値観のように思います。

さて、皆様も、課題に感じておられることを、「純度の高い正論」にして言葉にしてみてはいかがでしょうか。こうした思考をすると、本来するべきことが見えてくるような気がします。それに対して、時間がかかったとしても、そこに取り組んでいくしかないのだと思います。

     西事務所所長 山田より

2024年6月のつぶやき

先月は3月決算法人の申告が多数重なり、決算報告会で多くの社長、理事長、代表とお話しする機会がありました。業種それぞれの今の課題を振り返りつつ、業界の先行きや組織の事、増加する経費の事など経営者のお考えをお聞きすることが出来ました。決算報告会では終了した決算の内容とともに新年度の予算やこれからの中期的展望について財務数値を入れ込んだ5か年計画をもとにお聞きします。日頃は日々の業務と資金繰りに追われる企業にとっても、落ち着いて新たな戦略を練る機会になります。日々の業務に追われて場当たり的な対応を繰り返して行くと、本来向かうべき目的から逸れて、どこに向かってゆくのかわからない状態に陥る恐れがあります。『ワイズカンパニー』(野中郁次郎・竹内弘高著)では、「変化の著しい時代に対処するためには、知識を高次の暗黙知である知恵に昇華させる必要がある」と言っています。知識を知恵にするには実践から得られる判断の積み重ねが大切です。

 ㈱TKCの月刊誌、「戦略経営者」は14万部発行されており、中小企業に特化した経営雑誌です。様々な企業の戦略と経営の実践が多数掲載されています。絶え間なく実践されるイノベーション事例はまさに知恵の宝庫です。是非この毎月届く「戦略経営者」をお手に取って読んでみて下さい。地域で活躍する企業の知恵が惜しみなく披露されており、明日からの経営に力が沸いてくることでしょう。

     南事務所所長 市村より 

   

2024年5月のつぶやき

ある関与先の工場内を、棚卸資産の現況確認を目的に拝見する機会をいただきました。工程ごとに生産管理をしているキーマンを訪ね、日頃の管理方法や、言葉の定義等を確認させていただきました。そこで感じたことは、各現場それぞれに、誇りや気概をもって生産活動が管理されているということでした。

例えば、同じ材料を使った製品でも、付属品の有り無しによって、工程完了の基準が異なります。生産数量データをみると、均一な作業をイメージしがちですが、実際は次々と起こり得る事象に対応し、また、多種多様化する製品ごとにアジャストしながら、次の工程がよりスムーズに流れるよう、迅速な判断が繰り返されていることがわかります。こうした部門単位の“ベストプレー”がつながって、チームとして良い製品がつくられていることに感動を覚えました。

DXと言われて久しいですが、データはこうした営みが一定の定義のもと数値化されたものです。データからだけ判断するのではなく、そのデータがどのように生成されているのか想像しながら、活用することが重要だと感じました。

     西事務所所長 山田より

2024年4月のつぶやき

今年も個人所得税確定申告が完了しました。私たち会計事務所業務は通常期は法人事業・個人事業などビジネスに関する相談が主業務ですが、この時期は経営者個人の所得や財産に関する相談が多く寄せられます。事業承継のための株式の贈与に係る贈与税申告、個人財産の一部を売却したことによる譲渡所得税申告など私生活に関する相談や老後資金に関する相談なども多く寄せられます。

 そのような中、今年一番質問が多かったのは、NISA口座開設に関する質問です。ご存じの通り、今年1月から新しく制度設計されたNISA制度が始まりました。株価高騰と相まって、個人財産の一部を投資することへの関心が一段と高まっていることを感じます。もちろん、今までも「株式投資」や「投資信託の購入」などは一般に行われていたわけですが、税制改正にて1800万円もの大きな投資非課税制度が開始されたことで一気に関心が寄せられました。金融機関の連日のコマーシャルも過熱しています。何故、このような制度が措置されたかは、「個人資産を自身で設計する こと」「お金は貯めておくだけでなく、流通させることで経済効果を発揮させること」を国民が理解することを狙いとしています。NISA口座は11つ。18歳成人になると、まずはどの金融機関でNISA口座を開設するか、そしてNISA口座を使いやすい預金口座をどこに開設するか。今後は金融機関の選定でNISAが大きな影響を与えるでしょう。                 

     南事務所所長 市村より 

   

2024年3月のつぶやき

株価の上昇が報道されています。この原稿の執筆時点では、前日にバブル後最高値を更新、今日現在は、前日比300円安で推移しているようですが、いずれにしても高値であることに違いありません。その原因として言われているのは、賃上げによる内需活性化への期待感、物価上昇による相対的な貨幣価値の減少が投資を誘導している、はたまた新NISAの導入に伴う投資意欲の拡大等が影響しているとのことです。加えて令和6年度税制改正においては、更なる賃上げ促進税制の拡充が施された他、「目に見える形で可処分所得を伸ばす」という趣旨の定額減税が、6月分の源泉税等から順次適用されるという異例の措置も予定されています。こうした状況に触れ、とても身が引き締まる思いです。物価高を前提とした賃上げは、人材を安定的に確保していくためにも、さけては通れないテーマとなりつつあります。これを厳しい経営環境の中でどう実現していくか、簡単なことではありません。選択と集中、DX、イノベーション、プロセス見直しと生産性の向上、組織化等々。経営に真剣に取り組んでいかなければなりません。「未来会計」を駆使して、これからの経営を共に考えていきたいと思います。

     西事務所所長 山田より

2024年2月のつぶやき


先日、事務所の研修会で「外国人技能実習生制度」について学ぶ機会がありました。技能の習得状況に応じて日本での滞在期間が決定されること、受け入れ可能な職種、そして来日前後での教育の状況など詳細を説明いただきました。増加する外国からの人材に対する支援者としての側面から、大変勉強になりました。当所関与先でも、外国人技能実習生に限らず既に多くの外国人を受け入れており、さまざまな職場で外国人が活躍されている事を感じています。特にコロナ禍後に初めて外国人を受け入れた企業では、労務としての貢献以外に、企業内活性にも大きな効果が出ているようです。日本人社会の中で、異文化体験を持つ外国人は企業に新しい価値観をもたらしているようです。10年後には日本の就労者の10%以上が外国人になるとのことです。実は私自身も20年前のイギリスで「外国人」として就労をしていました。当時のイギリスでは出身国によって就ける職業も制限されており、EU内の人材、アジアの人材、アフリカの人材、インドの人材と明確に区分されていると感じました。数年前に当時の外国の友人と会う機会があり、既に子供も成人し二世達が就労していました。

     南事務所所長 市村より       イギリスで生まれ、イギリスの教育を受けた彼ら彼女ら二世は、イギリス人として社会の中枢を担う仕事に就い

                       ています。グローバル化する人材とその二世達、20年後の日本の姿が見えてくるように思います。   

    

2024年1月のつぶやき

2024年のキーワードの一つに「ダイバーシティ経営」があると思います。ダイバーシティという言葉自体は、聞く機会が増えて久しいと思います。これまでは、性別や国籍に捉われない平等な取り扱いを、というニュアンスが強かったと思いますが、より積極的に、多様な人材を企業経営にとり入れて強みにしていかなければならない、というのが今後求められるダイバーシティ経営だと認識しています。そのために必要となるのは、多様な働き方を受け入れることができる企業としての懐の深さ、課題やイノベーションに対して、チームで柔軟な議論ができる企業風土、そしてこうした姿勢を明確にして組織に浸透させるリーダーシップだと言われています。都度生じる課題に対して、異なった価値観で議論や役割分担をすることで、新しい発想が創出されイノベーションも生まれやすくなるようです。多様な人材を受け入れるということは、直接的に人材不足を解消するための手段でもあります。各種統計調査によれば、ダイバーシティへの取り組みを打ち出し、体制整備をしている企業ほど、求職の頻度や定着率が高いとの結果もでているようです。私たちも、一人一人が輝き活躍できる会社づくりを支援していきたいと思っております。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。


     西事務所所長 山田より

2023年12月のつぶやき

先月、東京で開催されましたアジア・オセアニア タックスコンサルタント協会(AOTCA)東京会議に参加し、税金に関する国際的課題について学ぶ機会を持ちました。言わずもがなですが、税金は国家の財政を担う根幹となるものであり、今日のように国をまたいだ経済取引が増加しますと、各国間での合意がなければ、熾烈な税の奪い合いが起こってしまいます。特にインターネットを通じた役務提供(サービス)活動は、経済取引が生じた国に拠点を置かずとも行えてしまいますので、課税することが難しい現状があります。ネット社会に身を置く私たちの支出の多くは、無意識のうちに国外企業へ流れ、日本の税金が課税されないまま利益が海外へ移転していく現状があります。2024年から世界中で始まりますデジタル課税への取り組みに各国が注目している事をAOTCA東京会議で感じることが出来ました。

余談ですが、会議の合間の懇談がとても楽しかったです。韓国の方からは「デジタルインボイス導入から10年が経過し、税計算がすっかり楽になった」「2年前に日本のふるさと納税に倣って韓国でも導入された」という話を、またモンゴルの方からは「日本は男性の税務専門家が多くて驚いた。モンゴルは昔から男性は馬に乗って狩りに行き、お金の計算は女性の仕事」という話を聞き、各国のお国柄を知ることが出来ました。税金にはお国柄も出るのでとても興味深いです。

      南事務所所長 市村より

2023年11月のつぶやき

「船が帰ってくれば支払いができる」。14世紀のヴェネツィア商人は、こんな先行きの見えない商売を安定化させたい一心で、現在の会計の原点といる複式簿記の仕組みを生み出しました。バンコ=現在の銀行が起こったのもこのころで、商人は複式簿記を駆使して、想定される利益額で借入金を返済していける見込みがあることを数値化。資金を調達して戦略的に船を購入し、また現地での仕入れ資金を確保しました。貸借対照表と損益計算書等の帳票もこの時に原型ができたと言われています。

インボイス制度や電子取引データ保存等、税務に関する制度対応が忙しい昨今において、帳簿の信頼性、そして税法等への適法性の確保は重要な課題となっています。これは言い換えれば「帳簿には証明能力・証拠力がある」という帳簿が有する機能の一つを強化しなければならないというテーマです。一方で、帳簿にはもう一つの重要な機能があります。「自己報告機能」です。つまり、経営管理に役立てるための機能とういことで、それは過去の分析だけでなく、将来に向けた意思決定に役立てるべきものとして、現代に至るまで世界各国で利用され、発達してきました。制度対応は、経営判断に役立つ「信頼できる帳簿」を手に入れ、より戦略的に会計データの活用を検討するチャンスでもあります。

     西事務所所長 山田より

2023年10月のつぶやき

 今年の夏は体温を超えるような気温が続き、まさに『酷暑』でした。ハワイでの火災報道などを観ると、「待ったなしの地球温暖化の進行」という人為的自然環境破壊が心の中の不安を増大させます。そのような中、「資本主義の次に来る世界~少ない方が豊かである」(ジェイソン・ヒッケル著)を読み、「資本主義 を前提とした成長志向は生物界を破壊する。支配と搾取から、生物界との共存社会への移行が必要であ る」という著者の主張に大きく賛同しました。一番印象に残った、この本の最後に書かれている言葉を 紹介します:「わたしたちはここで何をしているのか?どこへ行こうとしているのか?それは何のためなのか?人間が存在する目的は何なのか?成長主義は、わたしたちが立ち止まってこれらの疑問につい て考えること自体を阻むのだ。わたしたちは我を忘れ、あくせく働き、深く考えようとせず、自分が何をしているか、周囲で何が起きているのかに気づかず、自分が何を、そして誰を犠牲にしているのかに気づかない」 

 10 月からインボイス制度が導入されました。制度導入の目的は何か。どのような未来を私たちは作ろうとしているのか。本来の姿を見失わないようにしなければならないと強く感じます。

     南事務所所長 市村より

2023年9月のつぶやき

インボイス制度が101日からはじまります。実務的な対応は、事務所セミナー等で述べてきた通りですが、こうした税務の動きは何を表しているのでしょうか。インボイス制度の「インボイス」とは、商品・サービスの販売に関する取引の詳細を記載した書類であり、一般的に売り手が発行する書類です。世界においては、商取引上一般的に取り交わされるもののようですが、最近の潮流では、電子インボイスが主流となり行政機関のポータルに送信することで利用されているということです。

このインボイスの電子化が表すように、世界の税務は、行政における「データ」の収集と活用が大きく進み、規模の大小を問わずに、企業及び個人納税者の税金が未納となるような「タックス・ギャップ」は、今後劇的に小さくなっていくと言われています。消費税におけるインボイスの採用や確定申告におけるマイナポータルの活用等は、こうした動きの一端に他ならないでしょう。

では私たちはどうするべきか。我々自身もITAIを駆使して、会計情報を経営に生かすべきです。行政におけるデータの活用が進んでも、未来の税金へのアプローチは変わりません。今後の投資とタックスプランとを 一緒に考えていきましょう。

     西事務所所長 山田より

2023年8月のつぶやき

 ここ数か月の間に、仕事上の関係者や友人、海外からの留学生と話していて、ChatGPTGoogle翻訳について話題に上がることが増えてきました。コロナ禍が一段落し、経済活動が活気を呈してきたことで新たな動きが出てきたからでしょうか。ChatGPTについては、使用する方の専門に応じてその使い方が多様なことに驚きます。ビジネス定型文書作成、プログラムのコーディング検証、論文の校正、マスコミへのプレスリリース文書作成など。友人のひとりは、仕事上の悩み相談をChatGPTにしていると言っていました(!?) それぞれの専門に応じて、ガイドラインに基づいた使用を皆さん心がけていらっしゃるようです。

また、海外顧客との情報伝達にGoogle翻訳などを活用されている方も増えています。お互いに英語ネイティブでない方同士の場合、翻訳ソフトを用いての会話であることを了解した上でのやり取りが多いようです。これらのソフト活用のポイントは、「伝えたい内容が決まっている事」「形式を整え、思考を整理する補助としてソフトを利用すること」になります。まずは、簡単な内容から使ってみることで、新しい世界が広がるかもしれません。 

     

     南事務所所長 市村より

2023年7月のつぶやき

NHKの番組「いいいじゅー」が面白いです。この番組は、「新たな土地でチャレンジするイマドキ移住者たちの奮闘記」(番組紹介HPより)という内容ですが、その取り組みが型にはまっていなくて興味深いです。海の美しさに魅せられた女性は、ダイビング「ゴミ拾い」ツアーをビジネスとして立上げました。「実績が上がるほど、大好きな海が綺麗になっていく」というわかりやすいモチベーションが印象的です。拾ったゴミのリサイクルまで考えられていて、事業としての継続性がしっかり確保されています。 

はたまた、仏像修理師を志した女性3人組は、移住先の伝統産業である木工の設備に着目。工場に“間借り”して、挑戦を続けているとか。経年劣化による塗装の剥がれはそのままに、毀損部分だけを技術を使って直していくスタイルも、奥行きの深いものを感じました。ニッチな市場に着目した、これも納得の事業展開です。地域の資源というのは、外側から見たときに新たな可能性が見つかりやすいのかもしれません。きらきらと輝く移住者たちだけでなく、彼らを受け入れ、支援をする地域住民の笑顔もとても印象的です。ビジネスのヒントが見つかるかもしれません。皆さんも是非ご覧になってください。

     西事務所所長 山田より