税理士の今月のつぶやき (西事務所所長 山田)


西事務所所長 山田康博です。

好きな言葉は“担雪埋井”(たんせつまいせい)。“今できることを、気持ちをこめて一生懸命やるしかない“と解釈しています。

経営は、会計やシステマチックな分析に基づく戦略と、感情や情緒といった数字で測れないものとが入り混じる奥の深い世界だと思っております。仕事から学び、いずれ地域の力となれるよう業務に励んでまいります。

2024年9月のつぶやき

 新紙幣が発行され、1万円札の「顔」が渋沢栄一氏となりました。同氏が提唱した「合本主義」は、企業の独占的な利益追求を志向する「独占資本主義」とは異なり、公益を追求する人材と資本を幅広い層から集め、事業を推進していく考え方です。銀行は、この“再循環機能”を効率よく発揮するために全国で組織され、実際に多くの産業が、銀行からは資金を、そして広く民間からは人材を調達して興りました。その時代から1世紀と少し、物価高騰と少子高齢化で多くの社会課題が生まれてきている今、再び「合本主義」の思想を思い出す必要があるのかもしれません。

企業の立場から考えた場合の「合本主義」は、自社がその事業を通じて、いかに社会課題を克服し、貢献ができるか、ということだと思います。そのために磨き上げなければならない技術、ノウハウは何か。オリンピック・パラリンピックが開催されたフランスは、まさに渋沢栄一が合本主義を学んだ地でもあります。アスリートが躍動する姿と重ね合わせて、事業を通じて実現したい未来を創造してみてはいかがでしょうか。


2024年7月のつぶやき

 「正論は純度が高いほど、威力を発揮する」。今朝、テレビから流れてきたセリフが、耳にとまりました。そこで、私なりの企業経営に対しての正論を考えてみました。中小企業は、これまで以上に自らの“付加価値”を認識し提供していかなければなりません。その付加価値は、お客様にとって必要とされるものであり、企業であれば顧客の発展に、個人であれば快適さや潤いに貢献しなければなりません。それをなすためには何が必要か。様々な要素がありますが、一番は「企業は人なり」。働いている社員の皆が同じ方向を向いて、それぞれの個性で活躍する、会社の仕組み、そして風土をつくらなければなりません。それは人しだいではなく、会社しだいです。といったところが、私が考える企業経営の正論でしょうか。ありがたいことに、関与先様をモデルに、これまでの仕事の中で育まれてきた価値観のように思います。

さて、皆様も、課題に感じておられることを、「純度の高い正論」にして言葉にしてみてはいかがでしょうか。こうした思考をすると、本来するべきことが見えてくるような気がします。それに対して、時間がかかったとしても、そこに取り組んでいくしかないのだと思います。


2024年5月のつぶやき

 ある関与先の工場内を、棚卸資産の現況確認を目的に拝見する機会をいただきました。工程ごとに生産管理をしているキーマンを訪ね、日頃の管理方法や、言葉の定義等を確認させていただきました。そこで感じたことは、各現場それぞれに、誇りや気概をもって生産活動が管理されているということでした。

例えば、同じ材料を使った製品でも、付属品の有り無しによって、工程完了の基準が異なります。生産数量データをみると、均一な作業をイメージしがちですが、実際は次々と起こり得る事象に対応し、また、多種多様化する製品ごとにアジャストしながら、次の工程がよりスムーズに流れるよう、迅速な判断が繰り返されていることがわかります。こうした部門単位の“ベストプレー”がつながって、チームとして良い製品がつくられていることに感動を覚えました。

DXと言われて久しいですが、データはこうした営みが一定の定義のもと数値化されたものです。データからだけ判断するのではなく、そのデータがどのように生成されているのか想像しながら、活用することが重要だと感じました。


2024年3月のつぶやき

 株価の上昇が報道されています。この原稿の執筆時点では、前日にバブル後最高値を更新、今日現在は、前日比300円安で推移しているようですが、いずれにしても高値であることに違いありません。その原因として言われているのは、賃上げによる内需活性化への期待感、物価上昇による相対的な貨幣価値の減少が投資を誘導している、はたまた新NISAの導入に伴う投資意欲の拡大等が影響しているとのことです。加えて令和6年度税制改正においては、更なる賃上げ促進税制の拡充が施された他、「目に見える形で可処分所得を伸ばす」という趣旨の定額減税が、6月分の源泉税等から順次適用されるという異例の措置も予定されています。こうした状況に触れ、とても身が引き締まる思いです。物価高を前提とした賃上げは、人材を安定的に確保していくためにも、さけては通れないテーマとなりつつあります。これを厳しい経営環境の中でどう実現していくか、簡単なことではありません。選択と集中、DX、イノベーション、プロセス見直しと生産性の向上、組織化等々。経営に真剣に取り組んでいかなければなりません。「未来会計」を駆使して、これからの経営を共に考えていきたいと思います。


2024年1月のつぶやき

 2024年のキーワードの一つに「ダイバーシティ経営」があると思います。ダイバーシティという言葉自体は、聞く機会が増えて久しいと思います。これまでは、性別や国籍に捉われない平等な取り扱いを、というニュアンスが強かったと思いますが、より積極的に、多様な人材を企業経営にとり入れて強みにしていかなければならない、というのが今後求められるダイバーシティ経営だと認識しています。そのために必要となるのは、多様な働き方を受け入れることができる企業としての懐の深さ、課題やイノベーションに対して、チームで柔軟な議論ができる企業風土、そしてこうした姿勢を明確にして組織に浸透させるリーダーシップだと言われています。都度生じる課題に対して、異なった価値観で議論や役割分担をすることで、新しい発想が創出されイノベーションも生まれやすくなるようです。多様な人材を受け入れるということは、直接的に人材不足を解消するための手段でもあります。各種統計調査によれば、ダイバーシティへの取り組みを打ち出し、体制整備をしている企業ほど、求職の頻度や定着率が高いとの結果もでているようです。私たちも、一人一人が輝き活躍できる会社づくりを支援していきたいと思っております。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。


2023年11月のつぶやき

 「船が帰ってくれば支払いができる」。14世紀のヴェネツィア商人は、こんな先行きの見えない商売を安定化させたい一心で、現在の会計の原点といる複式簿記の仕組みを生み出しました。バンコ=現在の銀行が起こったのもこのころで、商人は複式簿記を駆使して、想定される利益額で借入金を返済していける見込みがあることを数値化。資金を調達して戦略的に船を購入し、また現地での仕入れ資金を確保しました。貸借対照表と損益計算書等の帳票もこの時に原型ができたと言われています。

インボイス制度や電子取引データ保存等、税務に関する制度対応が忙しい昨今において、帳簿の信頼性、そして税法等への適法性の確保は重要な課題となっています。これは言い換えれば「帳簿には証明能力・証拠力がある」という帳簿が有する機能の一つを強化しなければならないというテーマです。一方で、帳簿にはもう一つの重要な機能があります。「自己報告機能」です。つまり、経営管理に役立てるための機能とういことで、それは過去の分析だけでなく、将来に向けた意思決定に役立てるべきものとして、現代に至るまで世界各国で利用され、発達してきました。制度対応は、経営判断に役立つ「信頼できる帳簿」を手に入れ、より戦略的に会計データの活用を検討するチャンスでもあります。


2023年9月のつぶやき

 インボイス制度が101日からはじまります。実務的な対応は、事務所セミナー等で述べてきた通りですが、こうした税務の動きは何を表しているのでしょうか。インボイス制度の「インボイス」とは、商品・サービスの販売に関する取引の詳細を記載した書類であり、一般的に売り手が発行する書類です。世界においては、商取引上一般的に取り交わされるもののようですが、最近の潮流では、電子インボイスが主流となり行政機関のポータルに送信することで利用されているということです。

このインボイスの電子化が表すように、世界の税務は、行政における「データ」の収集と活用が大きく進み、規模の大小を問わずに、企業及び個人納税者の税金が未納となるような「タックス・ギャップ」は、今後劇的に小さくなっていくと言われています。消費税におけるインボイスの採用や確定申告におけるマイナポータルの活用等は、こうした動きの一端に他ならないでしょう。

では私たちはどうするべきか。我々自身もITAIを駆使して、会計情報を経営に生かすべきです。行政におけるデータの活用が進んでも、未来の税金へのアプローチは変わりません。今後の投資とタックスプランとを 一緒に考えていきましょう。


2023年7月のつぶやき

 NHKの番組「いいいじゅー」が面白いです。この番組は、「新たな土地でチャレンジするイマドキ移住者たちの奮闘記」(番組紹介HPより)という内容ですが、その取り組みが型にはまっていなくて興味深いです。海の美しさに魅せられた女性は、ダイビング「ゴミ拾い」ツアーをビジネスとして立上げました。「実績が上がるほど、大好きな海が綺麗になっていく」というわかりやすいモチベーションが印象的です。拾ったゴミのリサイクルまで考えられていて、事業としての継続性がしっかり確保されています。 

はたまた、仏像修理師を志した女性3人組は、移住先の伝統産業である木工の設備に着目。工場に“間借り”して、挑戦を続けているとか。経年劣化による塗装の剥がれはそのままに、毀損部分だけを技術を使って直していくスタイルも、奥行きの深いものを感じました。ニッチな市場に着目した、これも納得の事業展開です。地域の資源というのは、外側から見たときに新たな可能性が見つかりやすいのかもしれません。きらきらと輝く移住者たちだけでなく、彼らを受け入れ、支援をする地域住民の笑顔もとても印象的です。ビジネスのヒントが見つかるかもしれません。皆さんも是非ご覧になってください。